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【過去問解説】 標準旅行業約款「特別補償規程」その1 (令和4年出題)

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「変更補償金」と同様、「特別補償」(特別補償規程)についても近年よく見かける出題です。
これまた今年の試験では2問続けて出ました。次の問題番号17の事例と併せて見ていきましょう。

令和4年 約款 問題1(16) 配点4点/100点

標準旅行業約款に関する以下の設問について、該当する答を、選択肢の中から1つ選びなさい。
募集型企画旅行契約の部及び受注型企画旅行契約の部「特別補償」「特別補償規程」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

選択肢ア.
旅行の日程に、旅行者が旅行業者の手配に係る運送・宿泊機関等のサービスの提供を一切受けない日が定められている場合において、その旨及び当該日に生じた事故によって旅行者が被った損害に対し、特別補償規程による補償金及び見舞金の支払いが行われない旨を契約書面に明示したときは、当該日は企画旅行参加中とはしない。

選択肢イ.
旅行者が事故によって身体に傷害を被り、旅行業者が当該旅行者又はその法定相続人に補償金等を支払った場合、旅行者又はその法定相続人が、旅行者の被った傷害について第三者に対して有する損害賠償請求権は、旅行業者が支払った額の限度内で、旅行業者に移転する。

選択肢ウ.
旅行業者は、いかなる場合においても、事故の日から180日を経過した後の通院に対しては、通院見舞金を支払わない。

選択肢エ.
旅行業者は、携帯品損害補償について、補償対象品の1個又は1対についての損害額が10万円を超えるときは、そのものの損害の額を10万円とみなして損害補償金を支払う。

 

 

特別補償規程は、標準旅行業約款本文の中には出てきません。それだけボリュームが多く"別紙"スタイルになっているのです。
検索する場合は「旅行業 特別補償規程」などのワードで探してみてください(個人的なおすすめですが日本旅行のものが見やすいです)。

一括りに「特別補償」と呼びますが、その中身には、
・死亡補償金
・後遺障害補償金
・入院見舞金
・通院見舞金
・携帯品損害補償金
があります。これらは、企画旅行に参加する旅行者が、その企画旅行参加中に急激かつ偶然な外来の事故により身体の傷害や身の回り品の損害を被ったと認められる場合に旅行業者から支払われる補償金の一群です。

さて、この問題の正解(誤っているもの)は選択肢イ.です。

旅行者サイド(法定相続人を含む)が補償金を受け取る相手は、旅行業者の他にも、そもそもその事故を発生させた第三者が居るはずなのですが、仮に先に旅行業者側が特別補償規程に基づく補償金を支払ったとしても、残る"第三者"に対する請求権が消えるわけではありません(そちらはそちらで支払ってもらえる)。
ただし、これは身体に傷害を被った場合の話で、身の回り品の損害(携帯品損害補償金)の場合は状況が異なります。
後者のケースでは、支払った携帯品損害補償金の限度内で、旅行者サイドが有する"第三者への請求権"が旅行業者に移転します。これを「代位」と言います。
つまり、もし選択肢イ.の文面を「身体に傷害」→「身の回り品に損害」と読み替えれば"正しい"文章になります。「身体に傷害」のままなら"誤り"です。

それ以外の選択肢はいずれも"正しい"内容です。

選択肢ア.では「企画旅行参加中」の定義について触れています。
いつからいつまでをもって「参加中」なのか明確にしておかないと、下手すると例えば出発日の集合前に事故に遭った場合でも補償対象となってしまうので、
・添乗員有りであれば集合の受付から
・添乗員無しであれば最初の旅行サービスの提供時(駅での改札とか宿泊施設の入場とか)から
のように例が定められています。
選択肢ア.で述べているのは、日程の途中に「自由行動日」があった場合の話ですね。ただし、ここで該当するのは「運送機関のサービスも宿泊施設のサービスも一切無い日」のことなので、現実的にはそうあるケースでもありません(日中は自由行動でも宿泊ホテルは決まっているケースとかならよくありますが)。旅行業者の関与が24時間丸々及ばないのであれば、さすがに「企画旅行参加中とはしません」(その間の傷害・損害は補償しない)という話です。
似たケースでは、旅行中に旅行者の都合で一旦離脱する場合があります。この場合は、あらかじめ旅行業者側に断っていれば離脱中も「企画旅行参加中」扱いにしてもらえますが、無断での離脱中は事故があっても補償対象外です。

選択肢ウ.は通院見舞金における限度日数の規定です。
通院見舞金は、文字通り傷害によって通院を余儀なくされた場合の補償金で、通院日数が3日以上になった場合に支払われます。
あとは通院日数に応じて金額が変わりますが、上限が「90日以上180日まで」となっており、それ以上の支払規定はありません。
ちなみに、入院補償金であれば上限日数はありません(180日以上でも支払い)。

選択肢エ.は携帯品損害補償金における補償額の算出基準です。
まずもって、損害額とはそのものの価値(価額)とは限らず、修繕費の方が安ければ当然そちらが適用されます。その上で上限額があり、1個又は1対について10万円を超える額は元々補償されないのです。さらに、これに加えて、「1旅行者1企画旅行に対して15万円まで」という規定も別にあります。
足らない分は、そもそも事故を発生させた"第三者"に請求するか保険に頼るほかないのですが、携帯品損害の場合は、旅行業者から支払われた補償金の分だけ請求権が移転してしまうので(前述)、状況によっては"第三者宛請求"か保険で済ませた方が早いこともあります。

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