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【過去問解説】 宿泊施設の料金計算 (令和4年出題)

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各社各様に定まっている宿泊施設(ホテル・旅館)の料金体系にも実は一定のルールがあります。
「国内旅行実務」科目での出題例で見てみましょう。

令和4年 国内実務 問題3 配点4点/100点

宿泊に関する次の記述のうち、資料に基づき、誤っているものを1つ選びなさい。

(注1)モデル宿泊約款によるものとする。
(注2)入湯税及び宿泊税は課税されないものとする。
(注3)選択肢ア.は、宿泊客に違約金の支払義務がある宿泊契約とする。
(注4)選択肢イ.は、宿泊客に追加料金は発生していないものとする。
(注5)選択肢ウ.は、宿泊施設が時間外の客室の使用に応じたものとする。
(注6)選択肢ウ.は、サービス料及び消費税の計算を行わないものとする。
(注7)選択肢エ.は、宿泊契約が成立したとき、宿泊施設は指定期日までに申込金の支払いを宿泊客に求めるものとする。

◎資料
この設問における宿泊施設は、以下のとおりに定めている。
・旅館の場合
基本宿泊料:大人1人あたり1泊2食付20,000円
サービス料:10%
消費税:10%
宿泊契約解除の通知を受けた日が宿泊日の3日前であるときの違約金の比率:10%
宿泊契約解除の通知を受けた日が宿泊日の前々日であるときの違約金の比率:20%
宿泊契約解除の通知を受けた日が宿泊日の前日であるときの違約金の比率:30%
・ホテルの場合
基本宿泊料:ツインルーム(定員2名)1室あたり20,000円
チェックアウト:午前10時

選択肢ア.
この旅館の宿泊日が9月7日・8日・9日の3日である大人1人の宿泊客が、当該宿泊客の都合により9月6日に9月7日・8日の2日の宿泊契約の解除をこの旅館に申し出た。この旅館は、当該宿泊客から10,000円の違約金を申し受ける。

選択肢イ.
この旅館に大人1人と大人に準じる食事と寝具等の提供を伴う10歳の小学生の子供1人が1泊するとき、この宿泊客が支払うべき宿泊料金等の総額は41,140円である。

選択肢ウ.
宿泊客が、このホテルのツインルームを午後2時まで使用したとき、このホテルは時間外の客室の使用に係る追加料金として10,000円申し受ける。

選択肢エ.
このホテルのツインルームに、宿泊客と宿泊期間を2日とする宿泊契約が成立したとき、このホテルは申込金を20,000円とすることができる。

 

 

運送機関などと同様、宿泊施設においても利用者との間で契約時の取り決めが存在します。あらかじめ策定されたその取り決め事項を「宿泊約款」と呼び、内容は各施設で自由に決めることもできますが、観光庁が定めた「モデル宿泊約款」を採用しているところが多いです。国内旅行業務取扱管理者試験でも、この「モデル宿泊約款」に従って出題されますので、主だった条項は頭に入れておく必要があるでしょう。

この問題の正解(誤っているもの)は選択肢ア.です。

一見すると、
・9月7日宿泊分の契約解除 ・・・ 前日なので違約金は30%で6,000円
・9月8日宿泊分の契約解除 ・・・ 前々日なので違約金は20%で4,000円
合計で10,000円になるので合っているように見えます。ここが引っ掛けですね。
「モデル宿泊約款」を参照している方は、一番最後の方(たぶん「別表第2 違約金 旅館用」と書いてあるところ)をご覧ください。
さらに、脚注の2のところに「契約日数が短縮した場合は、その短縮日数にかかわりなく、1日分(初日)の違約金を収受します」と書いてあるかと思います。
すごく端っこですね。モデル宿泊約款を勉強した方には、もしかして「ここまで目を通せてなかったよ」という方もいらっしゃるかもしれません。でも残念ながら今回はここが勘所です。
この設問のケースでは、連泊(3泊)であり、全ての日を解除していない(9月9日の宿泊は残った)ことにより、この"契約日数の短縮"に当たります。
よって、収受される違約金は初日の9月7日分に相当する6,000円というのが正しい内容です。

残りの選択肢は全て"正しい"内容です。

選択肢イ.は、子供料金の計算方を知っていないと解けません。覚えるポイントは、
・大人に準じる食事と寝具等を提供したときは大人料金の70%
・子供用食事と寝具を提供したときは50%
・寝具のみを提供したときは30%
の料率です。ちなみに、上記は小学生以下に適用されますが、幼児はこれとまた別の設定があることもあります。
あとは、当てはめて計算するだけで、
大人20,000円+子供(大人の70%)14,000円+サービス料(それぞれの10%)3,400円+消費税(ここまでの合計に対して10%)3,740円で、合計41,140円となり合っています。
子供の料率を覚えていれば楽勝とも言えますが、今回は少々計算が面倒でしたね。

選択肢ウ.も、チェックアウト時以降の超過使用追加料金の計算方を覚えている必要があります。
・超過3時間まで ・・・ 室料金の3分の1
・超過6時間まで ・・・ 室料金の2分の1
・超過6時間以上 ・・・ 室料金の全額
この設問のケースでは、午前10時から午後2時までの超過ですから4時間、つまり6時間までの"2分の1"が適用されます。
よって、追加料金は10,000円で合っています。

選択肢エ.は、これまた申込金の規定を知っていなければなりません。と言ってもそんなにたいしたことはなく、
・宿泊期間の基本宿泊料が上限(3日以上の場合は3日分まで)
・ただし、実際にはこの上限以内で各施設がそれぞれ定める
・申込金を求めない場合もある(一応"特約"と称されています)
つまり、上限設定があるだけでそれ以内であれば(収受しない場合を含めて)各施設任せです。
この設問では、「20,000円とすることができる」と書いてあるだけなので、合っているというより"支障ありません"という言い方になります。

今回出てきた「連泊の一部取消」はそんなに見かけないケースですが、「子供料金」「客室の超過使用」「申込金の上限」は比較的よく見る問題ですので、それぞれこの機会におさらいしておきましょう。
逆に見れば、その知識がしっかり確立していれば、選択肢イ~エは合っている = 自信は無いけど消去法でア.が"誤り" という解き方もできたはずです。

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