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【過去問解説】 貸切バスの運賃・料金計算その2 (令和4年出題)

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この問題は9/11掲載記事で取り上げた設問の続きとなります。
ある学生団体がJR新幹線と貸切バスを利用しました。今回は、その後半の貸切バス運賃計算部分です、

令和4年 国内実務 問題1(2)-2 配点4点/100点

貸切バスによる運送に関する以下の設問について、選択肢の中から答を1つ選びなさい。
学校教育法による高等学校に通学する学生32人、当該学校の教職員2人、同行する旅行業者1人の計35人によって構成され当該学校の教職員が引率する団体が、次の行程で旅客鉄道会社(JR)の新幹線さくら号と大型車の貸切バス(本設問において、以下「大型バス」という。)を利用する場合の以下の設問について、資料に基づき選択肢の中から答を1つ選びなさい。

(注1)この団体は、JRによる運送の引受けがされているものとする。
(注2)JR運賃料金の計算にあたり、所定のは数整理はされるものとする。
(注3)「一般貸切旅客自動車運送事業標準運送約款」によるものとする。
(注4)大型バスの運賃は、「一般貸切旅客自動車運送事業の運賃・料金の変更命令について(平成26年3月26日付 九州運輸局長公示)」によるものとする。
(注5)この団体は、バス会社に対し当該学校の長が発行する証明書を提出しているものとする。
(注6)この利用に係る大型バスの運賃は上限額を使用して計算された最高額とする。
(注7)この利用に係る大型バスの料金は考慮しないものとする。
(注8)この大型バスの運賃計算にあたり、消費税の計算は行わないものとする。

◎行程
6月5日(日)通常期
出水駅6:32発→さくら400号(普通車指定席)→新鳥栖駅7:30着→徒歩→鳥栖市陸上競技
鳥栖市陸上競技場17:35発→大型バス→出水駅20:35着

◎大型バスの運行行程
1.出庫時刻は14時20分
2.車庫から鳥栖市陸上競技場の配車場所までの距離は高速道路を経由して190キロ
3.鳥栖市陸上競技場の配車時刻は17時20分
4.鳥栖市陸上競技場の配車場所から出水駅までの距離は高速道路を経由して190キロ
5.出水駅から車庫まで距離は1キロ
6.帰庫時刻は20時45分

◎資料
出水駅から新鳥栖駅までの九州新幹線を経路とする片道普通旅客運賃は3,740円である。
出水駅から新鳥栖駅までの九州新幹線の指定席特急料金(通常期)は3,770円である。
・この大型バスの時間制運賃の上限額は1時間あたり6,910円、下限額は1時間あたり4,790円である。
・この大型バスのキロ制運賃の上限額は1キロあたり150円、下限額は1キロあたり100円である。

◎問題
この大型バスの運賃に関する記述のうち正しいものはどれか。

選択肢ア.
この大型バスの運賃は、「時間制運賃:6時間×6,910円」、「キロ制運賃:380キロ×150円」として計算した額を合計する。

選択肢イ.
この大型バスの運賃は、「時間制運賃:8時間×6,910円」、「キロ制運賃:380キロ×150円」として計算した額を合計する。

選択肢ウ.
この大型バスの運賃は、「時間制運賃:6時間×6,910円」、「キロ制運賃:390キロ×150円」として計算した額の合計から2割引した額となる。

選択肢エ.
この大型バスの運賃は、「時間制運賃:8時間×6,910円」、「キロ制運賃:390キロ×150円」として計算した額の合計から2割引した額となる。

 

 

前回記事(9/11付 JR運賃・料金計算(団体))でも同じことを述べましたが、2問分の文章量(注釈文や補足文を含めて)になっているので長いです。
今回は貸切バスのところだけに注目すればよいのですが、散らばっているので読みにくい。
試験会場という特殊な環境では緊張や焦りでさぞ落ち着かなかったことでしょう。

さて、この問題では次の3つのポイントを押さえれば解けるので、それに関するところだけ着目することとします。

1.時間制運賃を求める
と言っても単価は既にわかっている(選択肢ア.~エ.いずれも同じ)ので時間数を求めるだけです。
設問文のあちこちに時刻が出てきますが、日帰りで単純な連続行程なので、「営業所出庫から帰着入庫まで」を見ればよいです。
つまり、14時20分と20時45分の差ですから、6時間25分ですね。
ここで注意するのは端数の扱いです。時間制運賃は1時間単位で計算され、分の部分は使いません。
・30分未満の端数は切り捨てる
・30分以上の端数は1時間に切り上げ
このケースは30分未満なので切り捨て、よって6時間となります。
さらに・・・ ここでホッとして最後の忘れ物をしないようにしましょう。安全運行のために必要なアレです。そう、「点呼点検等時間」ですね。
出庫前に1時間、帰庫後に1時間、計2時間分をプラスするのがルールなので、最終的な答えは8時間分となります。

2.キロ制運賃を求める
これも単価は既に出ていますし、経路に沿って距離を足していくだけです。
車庫~鳥栖市陸上競技場~出水駅~車庫 の合計は、190+190+1 = 381キロとなります。
ここでも端数計算。キロ制運賃は10キロ単位で計算されるので、
・10キロ未満の端数は10キロに切り上げ
となります。(こっちは切り捨てはありません。5キロ未満は・・・と勘違いして覚えないように!)
よって、390キロ分が最終的な答えです。

3.割引の有無
まあ、一般的な感覚から言って「学生団体なので割引あるよね」と決め打ちしたいところです。
一応規則を確認しておきましょう。注釈文にある「一般貸切旅客自動車運送事業標準運送約款」を見てみます。
・学校教育法第1条に規定する学校(大学及び高等専門学校を除く)に通学又は通園する者の団体
・当該学校の責任者が引率
・当該学校の長が発行する証明書を提出
意外と堅苦しいですね。1つ目と2つ目はいいとして、3つ目の"証明書"は頭に入れておきましょう。
この設問では注5でわざわざ証明書のことわりが入っています。この注釈が無ければ条件をクリアできないからです。
よって、割引は有りです。アレ?割引率はどこに?
そうなんです。「一般貸切旅客自動車運送事業標準運送約款」には割引有りとあるだけで、実は割引率の記載がありません。
今度は「一般貸切旅客自動車運送事業の運賃・料金の変更命令について(平成26年3月26日付 九州運輸局長公示)」を見てみましょう。
"2割引"の文字はそちらの中にちゃんと書いてありました。ひと安心。

これを踏まえて選択肢を見れば、正解(正しい計算式の組み合わせ)は選択肢エ.となります。

ちなみに、余談的な視点ですが、時間制運賃の計算で6時間(切り捨て)か7時間(切り上げ)かを迷わせる選択肢は無かったですね。
(「点呼点検等時間」を加えて9時間というのも無い)
あと、キロ制運賃で390キロ(切り上げが必要)と気付いた時点で、選択肢ウ.かエ.のどちらかになるので、割引有無は知ってても知らなくても正解に辿り着けます。
(実際私が解いたときも、エ.を選んだあとで、"2割引"の記述に気が付きました。。。)
逆も真なり。割引有りと決め打ちすれば、キロ制運賃が自動的に390キロとなる選択肢しかありません。

受験者から見れば新設設計。うん、それでいいんですが、解きごたえとしては若干消化不良気味ですね。設問文が長かった分、余計にそう感じてしまいます。

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