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【過去問解説】 貸切バスの運賃・料金計算その1 (令和4年出題)

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それでは、令和4年試験問題の過去問解説に取り掛かってまいります。
「法令」「約款」は後に回して、まずは皆さん気になっているであろう「国内実務」の問題を優先して取り上げていきます。
引き続きよろしくお願いいたします。

令和4年 国内実務 問題1(1) 配点4点/100点

貸切バスによる運送に関する以下の設問について、選択肢の中から答を1つ選びなさい。
次の利用内容で運行する大型車の貸切バス(本設問において、以下「大型バス」という。)に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

(注1)「一般貸切旅客自動車運送事業標準運送約款」によるものとする。
(注2)大型バスの運賃は、「一般貸切旅客自動車運送事業の運賃・料金の変更命令について(平成26年3月26日付 関東運輸局長公示)」によるものとする。
(注3)この大型バスの所定運賃は下限額を使用して計算された最低額とする。
(注4)この利用に係る大型バスの運賃の割引はないものとする。
(注5)この利用に係る大型バスの料金は考慮しないものとする。
(注6)選択肢エ.について、バス会社は契約責任者の都合による旅行日程の変更を承諾したものとし、かつ、変更後の旅行日程が記載された乗車券について、当該乗車券を所持することなく旅客の乗車を認めたものとする。なお、この運送契約内容の変更回数は選択肢エ.による1回のみである。

◎運送契約成立時における大型バスの利用内容
・ この大型バスは2日にわたる運送で宿泊を伴う利用である。
・ この大型バスは旅客の宿泊場所の駐車場に宿泊駐車し、この大型バスの運転者は旅客の宿泊場所に宿泊する。
・この大型バスの2日にわたる運送の走行時間の合計は8時間である。
・この大型バスの2日にわたる運送の走行距離の合計は200キロであり、その走行距離には10キロの回送距離が含まれている。

選択肢ア.
運転者の宿泊料はバス会社の負担である。

選択肢イ.
運送契約成立時の利用内容における時間制運賃を求めるための時間は10時間である。

選択肢ウ.
運送契約成立時の利用内容におけるキロ制運賃を求めるための距離は190キロである。

選択肢エ.
1日目の運行日当日、契約責任者の都合で、この大型バスの運行行程にある駐車待機時間が1時間延長となる旅行日程の変更が生じ、走行時間の合計が9時間となった。この場合、バス会社は、旅行終了後の精算において、時間制運賃1時間分の運賃を追徴する。

 

 

さて、いきなり問題用紙の1ページ分を費やす文章量の設問ですね。まともに全部読んでしまうとげっそり来ますが、注釈や補足の中にさらっと重要事実が記載されていることがありますので、そこは見落とさないようにしましょう。

"正しい"選択肢を選ぶ問題です。
正解はその選択肢のところで示しますので、上から順番に見ていきましょう。

まず、選択肢ア.は"誤り"です。
旅客サイド(文中表現では契約責任者)に必要となる費用には、バス会社への運賃や料金支払(時間制運賃・キロ制運賃・付帯料金)に加えて「実費負担分」があります。
具体的には、高速代や現地で使う駐車場代などが代表的な例です。もちろん旅客の希望(行程)に添って常識的に必要となることが条件で、あらかじめ契約の中でバス会社・契約責任者間で合意が成されていることは言うまでもありません。
このケースの乗務員宿泊代も旅客側負担となり、バス会社に押し付けることはできません。特殊なケースとしては、
・たまたまそのバス会社の別営業所が宿泊地至近にあり、乗務員はそこの設備に宿泊した。
のであれば、便宜を図ってもらえる可能性がありますが、先ほど述べたように、設問の補足文の中でその可能性を否定しているのでチェックしましょう。

選択肢イ.も"誤り"内容です。
エッ? 8時間プラス2時間で10時間じゃないの? と思った方は要注意!
「走行時間の合計は8時間」と補足文に最初から書いてあるのは親切ですね(旅客の実乗部分と回送部分が細かく分けられていない)。これに、営業所出庫前と帰着入庫後の「点呼点検等時間」1時間分ずつを加えればOK、なように一瞬見えます。
落とし穴は「2日にわたる運送で宿泊を伴う」であること。先ほど挙げた「点呼点検等時間」は1日分の行程ごとに必要です。つまり、
・1日目の営業所出庫前
1日目の宿泊地到着後
2日目の宿泊地出発前
・2日目の営業所帰着入庫後
の計2日分4時間をプラスするのが正しいので「時間制運賃を求めるための時間は12時間」となります。

続いて、選択肢ウ.も"誤り"です。
先ほどの選択肢イ.と同様に、こちらも「走行距離の合計は200キロ」と書かれているのでそのまま採用すればよいのです(「走行時間」「走行距離」には回送部分の内容も含まれる)。
わざわざ回送距離を引かせて、旅客の実乗距離だけで支払わせようとするミスリード問題ですね。こんな仕掛けには引っ掛からないようにしましょう。
もちろん現実にはそんなわけにはいきません。回送部分はバス会社持ち出しになるのであれば「どんな遠くの営業所からバスを呼んでも支払額は同じ」という非現実な理屈を意味してしまいます。

ということで、残った選択肢エ.が"正しい"(この問題の正解)ということになります。
実際、私もこの消去法プロセスで正解に辿り着きました。「アとイとウが"誤り"なので、たぶんエが"正しい"」と先に仮定した上で、エ.の文章を精査し、誤った記述や違和感がないかどうかを最終チェックします。
・実際に1時間の余計な"拘束時間"が発生していること
・契約責任者側の都合であること
・バス会社と契約責任者の間で合意が成されていること(注釈6参照)
なので、追加費用(この場合運賃の増額)の発生には合理性が十分あります。
1時間プラスなので「走行時間の合計が9時間となった」点も問題ありませんね(先ほど述べた「点呼点検等時間」加算後の総時間数と取り違えないようにしましょう)。

ここからは余談ですが、選択肢エ.の状況を勝手にイメージしてみると、
・営業所出庫時点では何もなかった
・旅客乗車時に誰かが集合時刻に遅れ、その場で1時間待った
・あるいは途中の下車観光地が楽しすぎて全員で時間を忘れた etc.
そんな光景が目に浮かびますね。実際よくあるケースです。その場での双方合意は必要でしょうが、バス会社側に一方的に譲歩を強いてはいけません。
同じようなことを出題者は思ってこの設問に設定したのでしょうか。だとすると私はその方のセンスにちょっと共感を覚えます。

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