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【過去問解説】 フェリーを含む一般旅客定期航路事業に関する標準運送約款 (令和4年出題)

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今度は海上運送機関(船舶)に関する約款です。結構細かいところを突かれたりするので、過去問学習を通じていろいろなポイントを蓄積しておきましょう。

令和4年 約款 問題3 配点4点/100点

海上運送法第9条第3項の規定に基づく標準運送約款(フェリーを含む一般旅客定期航路事業に関する標準運送約款)に関する次の記述のうち、誤っているものを1つ選びなさい。

選択肢ア.
フェリー会社は、約款に定める事由により運送契約の申込みを拒絶する場合を除き、使用船舶の輸送力の範囲内において、運送の申込みの順序により、旅客及び手回り品の運送契約の申込みに応じる。

選択肢イ.
旅客が乗船券を紛失したときは、フェリー会社は、旅客が乗船券を所持して乗船した事実が明白である場合を除き、改めて運賃及び料金を申し受け、これと引き換えに乗船券を発行するとともに、その旨の証明書を発行する。この場合において、当該旅客が紛失した乗船券を発見したときは、その通用期間の経過後6ヶ月以内に限り、当該証明書を添えてフェリー会社に運賃及び料金の払戻しを請求することができる。

選択肢ウ.
フェリー会社は、旅客が疾病により、継続して乗船することができなくなったことを証明した場合において、乗船券の通用期間の経過後30日以内に当該旅客が払戻しの請求をしたときは、券面記載金額と既使用区間に対応する運賃及び料金の額との差額を、当該乗船券の発売営業所その他当該フェリー会社が指定する営業所において、旅客に払い戻す。

選択肢エ.
フェリー会社は、法令の規定によるほか、災害時における円滑な避難、緊急輸送その他これらに類する旅客又は貨物の輸送を行う場合は、予定した船便の発航の中止又は使用船舶、発着日時、航行経路若しくは発着港の変更の措置をとることがある。

 

 

約款の正式名称はこれまたやたら長いので、検索する際には私も後半の「フェリーを含む一般旅客定期航路事業に関する標準運送約款」だけをコピペすることが多いです。

この問題の正解(誤っているもの)は選択肢イ.です。

乗船券の紛失は、いつ誰の身にも降りかかる可能性がありますのでこの機会に押さえておきましょう(JR等の場合も大体同じです)。
まず第一に係員にその旨を申告しますが、基本的には仕方ないので同じ切符をその場でもう一度買い直します。ただ、その履歴を残しておくために、
・その旨を証明する書面の発行
・切符に"紛失再"などの目印が入る
などの処置が行われます。あとは元通り旅行を続けるだけですが、旅行終了時に必ず前述の証明書(または再発行切符)を持ち帰るのをお忘れなく。
後日どこか(ポケット?鞄?)からオリジナルの切符が無事発見された折には両方を添えて再発行時の支払分を払戻請求できる仕組みになっています。
今回の問題ではその請求期限について問うています。正しくは「その通用期間の経過後1年以内」であって、「6ヶ月以内」と書かれたイ.は"誤り"です。
(ちなみに、JRの場合は「再発行支払日の翌日から起算して1年以内」なので概ね近い内容です。)

これ以外の選択肢はいずれも"正しい"です。

選択肢ア.は、よくよく読んで当たり前のことしか書いてありませんが、
・使用船舶の輸送力の範囲内において → 定員や積載重量のこと?
・運送の申込みの順序により → 要は先着順(もしくは予約順)?
と書けばわかりやすいのに杓子定規な感がありますね。
「約款に定める事由により運送契約の申込みを拒絶」というのは物々しい表現に見えますが、例えば荒天による運休などもこの事例に当たります。

選択肢ウ.も"正しい"ですが、少し補足を。
疾病や"旅客の一身に関する不可抗力"によって、継続乗船がかなわなくなった場合、ケースによっては回復するまで待つという手もあります。
その間に通用期間が経過してしまう場合に備えて、最大で7日までですが、通用期間を延長できる規定もあります。
以後の乗船を断念した場合は、ウ.の文面通りの対応となります。払戻請求期限の「通用期間の経過後30日以内」も含めて"正しい"です。

選択肢エ.も"正しい"です。
この規定は約款第5条「運航の中止等」の中にあるのですが、実はこの問題にある「災害時における円滑な避難、緊急輸送その他これらに類する旅客又は貨物の輸送を行う場合」はかつてここに明記されておらず("その他のやむを得ない事由"扱いだった)、後に追加されました。
追記された背景には東日本大震災などにおけるフェリーの徴発や活躍が思い起こされます。当時は旅行どころではありませんでしたが、船舶の有用性が別の形で見出されたきっかけでもありました。

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