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【過去問解説】 標準旅行業約款「旅行業者の解除権−旅行開始後の解除」 (令和3年出題)

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無事出発できたとしても、旅行の途中において以後の継続が行えなくなるケースはやはり発生し得ます。
そのような場合の対処規定も約款では定められています。

令和3年 約款 問題1(8) 配点4点/100点

標準旅行業約款に関する以下の設問について、該当する答を、選択肢の中から1つ選びなさい。
募集型企画旅行契約の部「旅行業者の解除権−旅行開始後の解除」に関する次の記述から、正しいもののみをすべて選んでいるものはどれか(いずれも解除に係る旅行者への理由説明は行うものとする。)。

a.旅行者が必要な介助者の不在により旅行の継続に耐えられないため、旅行開始後に旅行業者が契約の一部を解除したときは、旅行業者と旅行者との間の契約関係は、将来に向かってのみ消滅する。この場合において、旅行者が既に提供を受けた旅行サービスに関する当該旅行業者の債務については、有効な弁済がなされたものとする。
b.旅行目的地において地震が発生し当該旅行の継続が不可能となり、旅行業者が契約の一部を解除した場合において、旅行業者は、旅行代金のうち旅行者がいまだその提供を受けていない旅行サービスに係る部分に係る金額から、当該旅行サービスに対して取消料、違約料その他の既に支払い、又はこれから支払わなければならない費用に係る金額を差し引いたものを旅行者に払い戻す。
c.旅行者が旅行を安全かつ円滑に実施するための添乗員の指示に従わず、団体行動の規律を乱し、当該旅行の安全かつ円滑な実施を妨げるため、旅行業者が契約の一部を解除した場合において、旅行業者は、旅行代金のうち旅行者がいまだその提供を受けていない旅行サービスに係る部分に係る金額を旅行者に対し払い戻すことを要しない。

選択肢ア. a,b
選択肢イ. a,c
選択肢ウ. b,c
選択肢エ. a,b,c

 

 

「旅行業者の解除権−旅行開始後の解除」は約款(標準旅行業約款 募集型企画旅行の部)第18条に出てきます。

まず、a.の文面は"正しい"です。
「旅行者が病気、必要な介助者の不在その他の事由により旅行の継続に耐えられないとき」は、旅行途中であっても個別の契約解除できる事例に挙げられています。
ただ、後半の文章はこの契約解除理由に限らず、他の理由による契約解除の場合と共通です。
旅行の行程の途上であるので、既にここまでで経過(提供済)している旅行サービスについては債務が完了しており、事後弁済の対象にはなりません。この後に"払い戻し"に関する解説が出てきます(後述)が、その払い戻し対象となるのはあくまで未提供の旅行サービス部分に限られる、ということに繋がる規定となっています。


 

b.も"正しい"です。
旅行目的地における地震の発生は、「天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止、官公署の命令その他の当社の関与し得ない事由が生じた場合であって、旅行の継続が不可能となったとき」に相当し、契約解除可能な状況の一つです。
こちらの文面も後半は他の理由による契約解除の場合と共通です。"払い戻し"について述べています。
・まず、未提供の旅行サービス部分の代金が対象(提供済部分は払い戻しされない)
・該当する旅行サービスのキャンセルに伴い取消料や違約料が免除されない場合は旅行者負担(払い戻し額から差し引く)
・その他の費用についても支払免除できないものは同様(払い戻し額から差し引く)
この結果、残った金額が最終的に払い戻しされます。
旅行者側に責任(過失など)がある契約解除ならともかく、地震など止むを得ない理由での解除なのに取消料その他まで負担しなければいけないのは納得しにくいところですが、約款ではあらかじめこのように規定されているのです。

一方で、c.は"誤り"の内容です。
前半の契約解除理由までは正しいです。約款では「旅行者が旅行を安全かつ円滑に実施するための添乗員その他の者による当社の指示への違背、これらの者又は同行する他の旅行者に対する暴行又は脅迫等により団体行動の規律を乱し、当該旅行の安全かつ円滑な実施を妨げるとき」と定められています。
問題は後半部分です。純粋な旅行者側責任、仮に故意・過失や悪意があった場合であろうとも、契約解除に際し未提供の旅行サービス部分の弁済(払い戻し)を無しにする訳にはいかないのです。
先ほどa・bの解説で「他の理由による契約解除の場合と共通」と述べましたがその通りで、どの理由であっても同じルールにより残額の払い戻しが成される点については変わりありません。

以上によって、この問題の正解(正しいものの組み合わせ)は選択肢ア.(a,b)となります。

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