【過去問解説】 JR運賃計算方法 (令和3年出題)
旅行業務試験において、実際にJRの運賃計算までさせる出題はレアです。(絶対にあり得ないとは言い切れませんが)
今回の問題のように、必要な情報を示した上で、正しい計算方法を行っている選択肢はどれなのかを選ばせるのが基本スタイルです。
なので、計算方法をきちんとマスターしていさえすれば恐れる必要はありません。
令和3年 国内実務 問題2(2)-1 配点4点/100点
次の経路による行程で旅客が乗車する場合について、設問に該当する答を、選択肢の中から1つ選びなさい。
(注1)乗車に必要な乗車券は、最初の列車の乗車前に、途中下車しないものとして購入するものとする。
(注2)下記の行程におけるJR北海道とJR東日本の境界駅は新青森駅である。
◎行程
新函館北斗駅→北海道新幹線→新青森駅→東北新幹線→盛岡駅→東北本線(幹線)→花巻駅→釜石線(地方交通線)→釜石駅
◎キロ数情報
新函館北斗駅~釜石駅 営業キロ452.7キロ 運賃計算キロ461.7キロ
新函館北斗駅~新青森駅 営業キロ148.8キロ
上記の行程において、大人1人が乗車するとき、普通旅客運賃の計算に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
選択肢ア.
運賃は、「452.7キロ」の距離による基準額に、「148.8キロ」の距離による加算額を合計した額となる。
選択肢イ.
運賃は、「461.7キロ」の距離による基準額に、「148.8キロ」の距離による加算額を合計した額となる。
選択肢ウ.
運賃は、「452.7キロ」の距離による額となる。
選択肢エ.
運賃は、「461.7キロ」の距離による額となる。
まずは、JRの運賃計算ルールのうち、この設問に関係する辺りをおさらいしましょう。
1.JR6社のうち、複数(2つ以上)の会社をまたがる場合はそれぞれのキロ数を通算する。
2.経路の中に幹線のみを含む場合は「営業キロ」を使用、幹線と地方交通線が両方有る場合は「運賃計算キロ」を使用する。
3.当てはまる運賃表(後述します)により、上記のキロ数より運賃を求める。(下記4に当てはまらない場合はここで終了)
4.JR本州3社(東日本・東海・西日本)のいずれかとJR北海道・四国・九州のいずれかをまたぐ場合は、上記3の運賃を「基準額」と称する。
5.JR北海道(または四国・九州)内の乗車キロ数により、専用の運賃表で「加算額」を求める。4の「基準額」と5の「加算額」の合計が最終的な運賃。
では、これを踏まえて、
まずは1により、新函館北斗~釜石までの通算キロ数を求めます。
花巻~釜石のJR釜石線は地方交通線、それ以外は幹線なので、2により、使うのは「運賃計算キロ」の方です。
3の運賃表は幹線用、地方交通線用などいろいろありますが、ここではJR本州3社用の「幹線」表を使います。
他には、
・本州3社内で地方交通線だけを通る場合の運賃表
・JR北海道内の幹線用、地方交通線用
・JR四国内及び九州内用(キロ数によって特定運賃別表有り)
があります。
もっとも、この部分(どの運賃表を用いるか)は設問で問われていませんし、ここでは捨て置いても構いません。
複雑なので、実際の計算時は時刻表の営業案内を見るなどしてきちんと調べましょう。
4により、ここまでが「基準額」です。このあと「加算額」を求めます。
5で使うキロ数は、この場合、JR北海道内の新函館北斗~新青森の「営業キロ」(幹線なので)です。
専用の「加算額運賃表」に照らし合わせれば「加算額」が出ます。
以上が"正しい"運賃計算方法です。
よって、正解は選択肢イ.となります。
ただ、余談ですが、この設問については少し簡単すぎましたね。
例によって、これは試験問題だと割り切って言えば、
・幹線と地方交通線が両方有るのだから総キロは「運賃計算キロ」のはず。(この時点でア.とウ.は間違い)
・JR北海道とJR東日本にまたがっているのだから「加算額」が出てくるはず。(この時点でウ.とエ.は間違い)
と考えれば、途中をすっ飛ばしても、瞬殺でイ.が導き出せてしまいます。
まあ、この回みたいなラッキー問題ばかりとも限りませんし、JRの運賃計算は知っておいて損は無いので、きちんとしたプロセス自体も覚えておいてください。