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【過去問解説】 標準旅行業約款「受注型企画旅行契約の部」 (令和4年出題)

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ここまでは標準旅行業約款の募集型企画旅行の部を見てきましたが、次は受注型企画旅行についてです。
"オーダーメード"の団体旅行、旅行幹事の立場で携わった方もいらっしゃることでしょう。

令和4年 約款 問題1(13) 配点4点/100点

標準旅行業約款に関する以下の設問について、該当する答を、選択肢の中から1つ選びなさい。
受注型企画旅行契約の部に関する次の記述から、正しいもののみをすべて選んでいるものはどれか。

a.国内旅行(貸切船舶を利用する場合を除く。)において、旅行業者が企画書面及び契約書面に旅行代金の内訳として企画料金の金額を明示して契約している場合において、旅行者が自己都合により旅行開始日の前日から起算してさかのぼって21日目に当たる日より前に当該契約を解除したときは、旅行業者は、企画料金に相当する金額の取消料の支払いを受ける。
b.旅行者は、旅行業者に対し、旅行日程、旅行サービスの内容その他の契約内容を変更するよう求めることができ、旅行業者は可能な限りその求めに応じるが、その際、旅行の実施に要する費用が増加したときは、その増額分は旅行業者が負担しなければならない。
c.旅行業者は、旅行者に対し企画書面を交付することにより、契約書面の交付に代えることができる。
d.旅行業者は、団体・グループ契約において、申込金の支払いを受けることなく契約を締結する場合には、契約責任者にその旨を記載した書面を交付し、当該契約は、旅行業者が当該書面を交付した時に成立する。

選択肢ア. a,d 
選択肢イ. b,c 
選択肢ウ. a,b,d 
選択肢エ. a,b,c,d

 

 

受注型企画旅行の約款は、その多くの部分が募集型企画旅行のそれと共通です。もちろん受注型企画旅行特有の内容もあり、この問題ではその詰め合わせのような形になっています。
この問題は上から順に見ていきましょう。

まず、aは"正しい"内容です。
受注型企画旅行では、旅行者からの依頼に応じて「企画書面」を作成します。これは日程・行程や旅行サービス内容、必要な代金などをまとめた交付書面で、その作成作業の対価として取扱料金である「企画料金」が発生します。
もしこれが募集型企画旅行であれば、旅行開始日の前日から起算してさかのぼって21日目までの契約解除であれば取消料が発生しない(貸切船舶の場合はケースバイケースなので除く)のですが、受注型企画旅行では既に前述の作業対価(企画料金)が発生しているのでその分は返金されません。つまり、この額が取消料の扱いになっています。

続いて、bの内容は"誤り"です。
まず前半である、旅行者の希望により契約内容(日程・行程など)の変更に応じるところまでは合っています(約款第13条)。この点はさすがに"オーダーメード"の旅行らしいところです。ですが、その変更影響による増減額差分を旅行業者が肩代わりしなければいけないとは言い過ぎでしょう。実際には約款第14条「旅行代金の額の変更」の中で、第4項に「契約内容の変更の際にその範囲内において旅行代金の額を変更」と明記されています。

さて、ここまでで一旦選択肢を見てみましょう。bは"誤り"なので、それを含まないものは・・・ アレ? 選択肢ア.しかありませんね。これがこの問題の正解です。
このあとのcは"誤り"、dは"正しい"かどうか確認しておきましょう。

cは一見して怪しすぎます。「契約書面」については法令科目でも出てきましたが(10/22付記事参照)とにかく記載必要事項の定めが厳しく決められています。
これらの必要項目を全て網羅した「企画書面」を作れば、もしかしてこの話もありなんでしょうが、時系列で考えてみると、
旅行者から依頼 → 企画書面を交付 → 内容を吟味・手直し → 契約に至る → 契約書面を交付
となるので、どう見ても契約書面をあとで発行し直した方が早いですね。
ただ、実際には受注型企画旅行の契約書面には、最終確定した旅行内容(日程・行程ほか)が記載されることが多いので「契約書面は企画書面の役割を兼ねている」という言い方の方なら合っているのかもしれません。(逆は不可)

dは一般に"団体・グループ契約の特約"と呼ばれる事項です。通常は申込金の受理をもって契約が成立するところですが、受注型企画旅行で相手方旅行者が信用に耐えうる場合であれば、申込金無し(残り代金と後日一括払い)で契約を結んでよいという規定です。
ただし、口頭では不可。その旨を記録する書面の発行は必要です。これには、その書面の交付日=契約締結日とする法的根拠があるからです。

ということで、a,d が正しい選択肢ア.で合っていましたね。
先ほども触れた通り、あからさまに怪しいものを先に潰しておいた方が正解に早く辿り着くというのは有効な考え方かと私は思います。"誤り"を判断するより"正しい"を立証する方が面倒なので。消去法の一種ですね。

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