【過去問解説】 標準旅行業約款「変更補償金」その1 (令和4年出題)
旅行業務試験でも最近よく見かけるようになった「変更補償金」の登場です。
今年度は2問続けて出題されたようです。関心が高いのでしょうか。
令和4年 約款 問題1(14) 配点4点/100点
標準旅行業約款に関する以下の設問について、該当する答を、選択肢の中から1つ選びなさい。
募集型企画旅行契約の部及び受注型企画旅行契約の部「旅程保証」に関する次の記述から、誤っているものはどれか(いずれも変更補償金を支払う場合に、その額は約款が定める支払いが必要な最低額を上回っているものとする。)。
選択肢ア.
旅行業者は、契約書面に記載したレストランから契約書面に記載の無い他のレストランに変更したことにより、旅行開始前に旅行者が契約を解除した場合、旅行者に変更補償金を支払わない。
選択肢イ.
旅行業者が支払うべき変更補償金の額は、旅行者1名に対して1企画旅行につき旅行代金に15%以上の旅行業者が定める率を乗じた額をもって限度とする。
選択肢ウ.
旅行業者は、約款に定める契約内容の重要な変更が生じた場合に、旅行者から旅行業者にその旨の申出があったときに限り、旅行者に対し変更補償金を支払う。
選択肢エ.
旅行業者は、契約書面に記載した宿泊機関の名称を変更した原因が、当該旅行業者の手配代行者の責任によるものであることが明らかな場合は、旅行者に変更補償金を支払わない。
「変更補償金」について初見の方に簡単に説明すると、旅行業者に非が無く、かつ天災地変や運休・宿泊施設休業など止むを得ない事情を除いた「契約内容の重要な変更」が発生したときに、旅行者に支払われる"見舞金"の性格をもった補償です。
実際にどんなケースで適用されるかは細かくいろいろあるので、過去問練習を通じて蓄積しながら覚えていくのが早道です。(この次の問題番号15でも事例が出てきます)
この問題の正解(誤っているもの)は、選択肢ウ.です。
ただ、実際には約款を細かく見ても旅行者からの申告の要否は書いてないんですよね(私の見落としかもしれませんが)。
まあここで出てくるような「契約内容の重要な変更」は全参加者に共通して影響する類のものですから、発生した時点で全員に一律適用するやり方が正しいのかと思います。
ということで個々の申出は必要無し、選択肢ウ,は"誤り"です。
これ以外の選択肢はいずれも"正しい"です。
選択肢ア.はよくよく考えて当たり前の話ですね。「変更補償金」は実際に影響を受けた旅行者(つまり、事前解約しなかった方)に支払われるものです。
ただ、「(変更補償金に相当するような)これこれの変更が発生しますよ」という事前通知は必要です。その事実をもって「やっぱりやめた」と契約解除する方が出てくる可能性があるからです(この場合、前述の通り変更補償金無しですが、その代わり取消料は免除されます)。
それにしても例とはいえ、レストランの変更で契約解除とはよほどの内容だったんですね(ホテルの変更や運送機関のグレード変更とかならいざしらず)。余談ですが。
選択肢イ.も"正しい"内容です。
変更補償金は無限に適用されるものではなく、ここに書かれたように上限があります。(ちなみに下限もあって、適用合計が1,000円以上でないと支払われない。)
これまた余談ですが、15%を超えるような事態であれば、もう「重要な変更ありまくり」です。原型をとどめていないと言っても差し支えなく、もしこれが旅行前に発覚(事前通知)していたら契約解除続出でしょうね。旅行開始後に発覚であっても「止むを得ないケースは除く(前述)」であるのにこの始末では、企画者のリサーチ不足が疑われても仕方ありません。
選択肢エ.は"正しい"ですが、少し補足が必要です。
"見舞金"性格であるのに、旅行業者サイド(このケースでは手配代行者)に責任がある場合は支払われないというのは一見不誠実なように見えますね。これは実は、非がある場合に支払われるのは「損害賠償金」という別の名目の金額だからなのです。
「変更補償金」と「損害賠償金」は二重適用されず「損害賠償金」が優先です。(たいていの場合は損害賠償金>変更補償金ですが)
もし仮に、変更補償金が一旦支払われた後で、実は非があったことが後日発覚した場合は、損害賠償金-支払済の変更補償金 の差額だけが追加支払される徹底ぶりです。