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【過去問解説】 標準旅行業約款「旅行業者の解除権等−旅行開始前の解除」 (令和4年出題)

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募集型企画旅行の契約解除は、旅行業者側から発せられることもあります。
「旅行業者の解除権等」と呼ぶのですが、内容は大きく分けて個別解除(旅行者側に責任がある場合)と催行中止(旅行の実施自体が行えないとき)があります。

令和4年 約款 問題1(7) 配点4点/100点

標準旅行業約款に関する以下の設問について、該当する答を、選択肢の中から1つ選びなさい。
募集型企画旅行契約の部「旅行業者の解除権等−旅行開始前の解除」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか(いずれも解除に係る旅行者への理由説明は行うものとする。)。

選択肢ア.
旅行業者は、日帰りの国内旅行において、参加する旅行者の数が契約書面に記載した最少催行人員に達しなかったことから、旅行業者が契約を解除しようとするときは、旅行開始日の前日から起算してさかのぼって、3日目に当たる日より前に、旅行者に当該旅行を中止する旨を通知する。

選択肢イ.
旅行者が旅行業者があらかじめ明示した性別、年齢、資格、技能その他の参加旅行者の条件を満たしていないことが判明したときは、契約を解除することがある。

選択肢ウ.
旅行業者は、旅行者が病気、必要な介助者の不在その他の事由により、当該旅行に耐えられないと認められるときは、契約を解除することがある。

選択肢エ.
旅行業者は、スキーを目的とする宿泊を伴う国内旅行において、降雪量不足で滑降ができないおそれが極めて大きいことにより、契約を解除しようとするときは、旅行開始日の前日から起算してさかのぼって13日目に当たる日より前に、旅行を中止する旨を旅行者に通知しなければならない。

 

 

2つ挙げたケースのうち、個別解除については、9/28記事でも取り扱った「契約締結の拒否」とほぼ似ています。要は契約前にわかったか契約後に発覚したかの違いだけです。
催行中止については"最少催行人員未達"が一つのポイントになりますので、その内容は少し覚えてください。

この問題の正解(誤っているもの)は選択肢エ.です。

まず、「スキーを目的とする国内旅行において、降雪量不足で滑降ができないおそれが極めて大きい」自体は、催行中止を判断してよい合理的な条件の一つとしてこの通り明記されています。スキー以外の宿泊や他の立ち寄り観光地もあるじゃん、というぐらいなら他のツアーを選び直した方がマシです。
では、どこが間違っているのかと言えば、「旅行開始日の前日から起算してさかのぼって13日目に当たる日より前に通知」の箇所です。旅行者への中止の通知は必要です。ただ13日前というのはこの場合ちょっと早すぎると感じませんか? 数日前でも大雪が降りさえすれば間に合いますし、2週間前だと天気予報もあてになりません。そこの違和感に気付けば"誤り"判定できます。
実際には、このケースにおいて"何日前に"という規定はありません。ギリギリまで待つかどうかは旅行業者ごとの判断になります。
では「13日前」という数字はどこから出てきたのでしょう。それはこのあとの解説で触れます。

これ以外の選択肢は、いずれも"正しい"です。

選択肢ア.は、前述した"最少催行人員未達"による催行中止の一例ですね。
この解除理由自体には疑問を感じる方はいらっしゃらないでしょうからそこは置いておいて、見なければいけないポイントは「何日前に旅行者に催行中止通知しなければいけないか」です。
これは旅行の内容(と言うよりボリューム?)によって決められており、今回のケースの日帰り旅行なら、「旅行開始日の前日から起算してさかのぼって、3日目に当たる日より前」と規定されているのでこれは合っています。
他のケースもまとめてみましょう。
日帰り旅行の場合 ・・・ 前日から起算して3日目より前
宿泊有りの国内旅行 ・・・ 同13日目より前
海外旅行の場合 ・・・ 同23日目より前
海外旅行(ピーク時) ・・・ 同33日目より前
この問題では日付は出てきませんでしたが、まれに期限日付の正誤を問う出題方がありますので注意してください。多くの方は旅行開始日から数え始めると思うのでその場合は「プラス1日」するのをお忘れなく。
(例えば、旅行開始日10/9の日帰り旅行なら、中止通知期限は"開始日から4日前"に当たる10/5が正しい)
さて、余談ですが、先ほどの選択肢エ.に出てきた「13日前」の正体はおそらくここにあります。
"雪不足によるスキー催行中止"と"最少催行人員未達による催行中止"を一緒くたにしてミスリード(引っ掛け)にしていたんですね。わざわざ「宿泊」と書いてあったのはそのためです。(スキー催行中止に日帰りと宿泊は本来関係ありませんが、最少催行人員未達の方は宿泊だと13日前なので)

選択肢イ.は、元々「契約締結の拒否」にもあった事項です。つまり、契約時点では嘘をついていたのか悪意はないけど気付いていなかったというケースが大半でしょう。
レアでは「旅行者の交替」で生じる場合もあります。当初の契約者は参加条件をクリアしていましたが、何らかの理由で参加できなくなり、代理の参加者を用意した。ここまではよいのですが、その交替者は残念ながら参加条件を満たしていなかった場合です。厳密に言えば、旅行業者による交替承諾プロセスでそこが指摘され交替は認められないでしょうから、結局は当初の契約者の解除という形にはなるのですが。

選択肢ウ.は、同じく契約時点の嘘と言うより、その後に病気が悪化したのでしょう。(ちなみに「契約締結の拒否」にこの事項はありません)
団体行動ですので、病気の具合いで同行スケジュールに支障をきたすのであれば論外です。介助者が居れば大丈夫なのかどうかは実際にはケースごとの判断になると思います。

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