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【過去問解説】 標準旅行業約款「旅行者の解除権」 (令和4年出題)

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今回は、契約した募集型企画旅行を解除(取消)する場合の話です。
旅行者側からの希望で取消するケースは「旅行者の解除権」という条項でまとめられています。

令和4年 約款 問題1(6) 配点4点/100点

標準旅行業約款に関する以下の設問について、該当する答を、選択肢の中から1つ選びなさい。
募集型企画旅行契約の部「旅行者の解除権」に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

選択肢ア.
旅行業者が旅行者に対し確定書面を交付すべき場合において、所定の期日までに、確定書面を交付しなかったときは、旅行者は旅行開始前に取消料を支払うことなく契約を解除することができる。

選択肢イ.
旅行者が、旅行開始後に、当該旅行者の責に帰すべき事由によらず契約書面に記載した旅行サービスを受領できなくなった場合において、旅行サービスの当該受領することができなくなった部分の契約を解除したときは、旅行業者は、旅行代金の全額を旅行者に払い戻さなければならない。

選択肢ウ.
旅行開始前において、旅行業者によって契約内容が変更されたときは、旅行者は変更内容の如何にかかわらず取消料を支払うことなく契約を解除することができる。

選択肢エ.
旅行開始前において、旅行者は、病気により入院したことを事由として、取消料を支払うことなく契約を解除することができる。

 

 

旅行者の「解除権」と銘打っていますが、そもそも旅行者はいつでも希望すれば旅行契約を解除することができるので"権利の有無"云々という話ではありません。
第16条「旅行者の解除権」の中で規定されているのは、
・契約解除に伴い、取消料が必要となるかならないか
・旅行途中において、残りの日程・行程を解除した場合にどうなるか
の主に2点です。

この問題の正解(正しいもの)は選択肢ア.です。

「約束期日までに確定書面が交付されなかった」ということは、未確定部分の手配が間に合わなかった可能性が考えられます。ひいては旅行業者の旅程管理能力や日程・行程通りに旅行が本当に実施できるかどうかまで最終的には疑われるので、この事実をもってして旅行者は見切りをつけてよいことになっています。
よって、取消料無しでの契約解除に応じます、となります。
取消料が要らなくなる解除の例は他にも、
・契約内容の変更があったとき(ただし、日程変更や運送機関・宿泊施設の変更など"重要な"(別途規定があります)変更だった場合)
・著しい経済情勢の変化等により、旅行代金が増額されたとき
・天変地異や運送機関・宿泊施設のサービス停止など他者の止むを得ない事由で旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となりそうになった場合
・旅行業者の責任で、旅行日程に従った旅行の実施が不可能になったとき
があります。

一方で、選択肢イ.は"誤り"です。
選択肢イ.で挙げたケースでは、確かに取消料(旅行業者、つまり募集型企画旅行そのものに対するもの)は不要です。ですが、
・既に受けたサービス(終了した部分の日程・行程)箇所の返金はありません。
・未提供の箇所においても取消手続に際して費用(例えば、運送機関・宿泊施設に対する取消料)が発生する場合、それは差し引かれることがあります。
なので、旅行代金の全額が戻る可能性はまずありません。("必ず全額を返金"は誤り)

選択肢ウ.も"誤り"です。
選択肢ア.の説明で触れた通り、契約内容の変更は"重要な"ものであった場合のみ取消料不要で、「変更内容の如何にかかわらず」ではありません。
つまり、"軽微な"契約内容変更なのに解除した場合には、通常通り取消料が発生します。
"重要な"変更かどうかは、この場合「変更補償金支払事例に相当するか」(約款の別表第二参照)を物差しとしていますので、掘り下げたい方はそちらをご覧ください。

選択肢エ.も"誤り"です。
これはどう見ても旅行者都合ですね。取消料が免除になるとは思えません。
入院で本人参加が無理なら「旅行者の交替」(約款第15条参照)という手もあるのですが、そちらでも所定の手数料は発生し、いずれにせよ無償でというわけにはいきません。

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