【過去問解説】 旅行業法「旅行業務取扱管理者の職務」 (令和4年出題)
旅行業務取扱管理者は、営業所ごとに1人選任し、"管理・監督"業務に当たる。ここまではわかりましたが、さて実際には何をすればよいのでしょう。
心配しなくても、条文にはちゃんと一つ一つ書いてありますので大丈夫です。
令和4年 法令 問題(9) 配点4点/100点
旅行業法及びこれに基づく命令に関する以下の設問について、該当する答を、選択肢の中から1つ選びなさい。
次の記述のうち、旅行業務取扱管理者の職務として定められていないものはどれか。
選択肢ア.
法第12条の9の規定による標識の掲示に関する事項
選択肢イ.
旅行に関する計画の作成に関する事項
選択肢ウ.
法第12条の4の規定による取引条件の説明に関する事項
選択肢エ.
契約締結の年月日、契約の相手方その他の旅行者又は旅行に関するサービスを提供する者と締結した契約の内容に係る重要な事項についての明確な記録又は関係書類の保管に関する事項
さて、「条文にちゃんと書いてある」と述べましたが、旅行業法本文のどこを見てもこれらの記述は出てきません。
でもご安心ください。例によって細かい事項が書いてあるのは旅行業法施行規則の方なので、そちらを見てみましょう。第2章 第1節 第10条のところにちゃんと「旅行業務取扱管理者の職務」というのが載っています。
とりあえず、そこに並んでいる項目(旅行業務取扱管理者がしなければいけないこと)をそのまま引用しておきます。
・旅行に関する計画の作成に関する事項
・法第十二条の規定による料金の掲示に関する事項
・法第十二条の二第三項の規定による旅行業約款の掲示及び備置きに関する事項
・法第十二条の四の規定による取引条件の説明に関する事項
・法第十二条の五の規定による書面の交付に関する事項
・法第十二条の七及び法第十二条の八の規定による広告に関する事項
・法第十二条の十の規定による企画旅行の円滑な実施のための措置に関する事項
・旅行に関する苦情の処理に関する事項
・契約締結の年月日、契約の相手方その他の旅行者又は旅行に関するサービスを提供する者と締結した契約の内容に係る重要な事項についての明確な記録又は関係書類の保管に関する事項
・前各号に掲げるもののほか、取引の公正、旅行の安全及び旅行者の利便を確保するため必要な事項として観光庁長官が定める事項
全文を丸暗記するには長いので、赤字キーワード部分だけでもよいですよ。
旅行業務取扱管理者の仕事って、結構重要であることがわかるかと思います。現実にはこれらを全て一人だけでやらなければいけないわけではなく、ある程度は部下・同僚にも手伝ってもらった上で、でも最終的なチェックと実行責任は自分で負わなければいけません。それが"管理・監督"業務です。
では、各選択肢と照らし合わせていきましょう。
この問題の正解(旅行業務取扱管理者の職務として定められていないもの)は、選択肢ア.です。
標識とは、この場所(営業所)がどんな旅行業務を扱っているかを公衆に対して示すもので、見やすいように掲示する義務があります。
ですが、その義務は旅行業者もしくは旅行業者代理業者に課せられたものであり、旅行業務取扱管理者自身が携わらなければいけないわけではありません。
それ以外の選択肢は、前述した一覧にもあるように、れっきとした旅行業務取扱管理者の職務です。
選択肢イ.の「旅行に関する計画の作成」は、実際にやったことがある方ならおわかりでしょうが、毎回下調べから全て一人でやるのは大変そうですね。
ここは先ほど述べた通り、ある程度の分担と最終チェックで切り抜けることになるかと思います。
選択肢ウ.の「取引条件の説明」は、契約に繋がる重要ステップですのでここをおろそかにしてはいけません。
実際には、説明しなければいけない項目は一つ一つ規定されているので、それに沿って旅行者に応対していけばよいです。旅行者にとっても旅行業者側にとっても後々不利な部分が残らないようにしましょう。
選択肢エ.の「締結した契約の内容に係る重要な事項についての明確な記録又は関係書類の保管」についてもこの通りですね。これを人任せにしてしまっては後で大変なことになりそうですから、保管方法(保管場所)をはじめ、きちんと管理・監督しておきましょう。
なお、私自身も旅行業務取扱管理者の実務経験はありません。なので、上記の話には想像も含まれます(知り合いの実務者に聞いた内容もありますが)。
毎回、旅行業務試験の過去問でこの項に触れるたび、その業務の大変さと、ひいてはこの試験で旅行業務取扱管理者に求められるレベルについて思いをはせるしだいです。