【過去問解説】 旅行業法「目的」 (令和4年出題)
さて、ここまでは皆さんが関心の深い国内旅行実務科目を優先して取り上げてきましたが、ここいらで「法令」「約款」科目にも目を向けて適宜織り交ぜていきたいと思います。
令和4年 法令 問題(1) 配点4点/100点
旅行業法及びこれに基づく命令に関する以下の設問について、該当する答を、選択肢の中から1つ選びなさい。
次の記述のうち、法第1条「目的」に定められているものはどれか。
選択肢ア.
旅行業等を営む者の利便の増進
選択肢イ.
旅行業等を営む者の業務の公正な競争の確保
選択肢ウ.
旅行に関する需要の拡大
選択肢エ.
旅行業等を営む者の組織する団体の適正な活動の促進
今年も例年通り、旅行業法第1条「目的」が出題されましたね。皆さん過去問で十分対策済でしょうから、確実に1問目をゲットできたことかと思います。
第1条「目的」は6つの内容で構成されています。
・旅行業等を営む者について登録制度を実施
・旅行業等を営む者の業務の適正な運営を確保
・旅行業等を営む者の組織する団体の適正な活動を促進
・旅行業務に関する取引の公正の維持
・旅行の安全の確保
・旅行者の利便の増進
うち、上記の赤字部分キーワードだけ覚えてもいいですよ、というのがいつもの私の解説パターンなんですが、このところ出題に少しヒネリが入っています。
それは選択肢ア.に現れており、「利便の増進」キーワードが含まれているので、一瞬これが正解かと見えてしまいます。
よく見ればもちろん間違い、これは引っ掛け選択肢なのです。
もう一度先ほどの6つの内容を見てみましょう。
6つのうち、上の3つは「旅行業等を営む者」に係っています。つまり、これらは旅行業者等に対する"施索"というものです。
もうちょっと踏み込むと、「旅行業者等のために」ではないことに注目しましょう。
「~のために」と捉えることのできるのは後半の3つ。しかもこれらはどちらかと言えば「旅行業界のために」「旅行者のために」と言える内容です。こちらが本来の意味でいう旅行業法を定める"目的"に当たります。
"業務の適正な運営を確保"、"団体の適正な活動を促進"も読みようによっては旅行業者等のために、と思えますが、これらもひいては旅行業界・旅行者を護るための"措置"なのです。
選択肢イ.も"公正"という単語が使われているので少しひきずられますね。
「公正の維持」は必要(旅行業界や旅行者のために)ですが、公正な競争を(旅行業者等のために)わざわざあおる必然性はありません。
選択肢ウ.も立派な文言ですが違います。
"需要の拡大"は確かに大事なテーマですね。このところはコロナ禍で特に落ち込んでいるのでさらに重要性が増しています。
ですが、旅行業法を定めることでカバーしきれる範囲ではありません。別の施索・方策で語られるべきところでしょう。
ということで、正解(正しいもの)は選択肢エ.となります。
前述の6つの文章の一つにピタリ一致しており、そのまま覚えていればそもそも迷う(引っ掛けに取り乱される)こともありません。